大雪や台風、地震、道路の通行止めなどによって、発送した商品をお客様へ届けられなくなることがあります。特に、生鮮食品や冷蔵・冷凍商品を扱うECサイトでは、配送会社の保管期限、商品の消費期限や賞味期限、温度管理、返送や再発送にかかる費用など、さまざまな問題を同時に判断しなければなりません。本記事では、災害や悪天候などによって商品を配達できなくなった場合に、どのような点を確認し、返送や現地処分、返金、再送などの対応をどのような基準で判断すればよいのかを整理します。
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最初に確認するのは「配送」と「商品の期限」
配送に問題が発生した場合、まず確認したいのは次の3点です。
- 配送会社の保管期限
- 商品の消費期限・賞味期限
- 配送再開の見込み
配送会社では、営業所などで荷物を保管できる期間が定められています。
例えば、ヤマト運輸のクール宅急便は、原則として最初の不在連絡票を届けた日を含めて3日間の保管、日本郵便のゆうパックは、原則として7日間保管されるなどです。※実際の保管期限については配送会社のHP等でご確認ください。
このように、利用する配送サービスによって保管期限が異なります。普段利用している配送会社の条件は、トラブルが起きる前に確認しておきましょう。
ただし、配送会社の保管期限内だからといって、商品の品質を維持できるとは限りません。
生鮮食品や冷蔵商品では、配送会社が保管できる期間よりも、商品の消費期限や、おいしく食べられる期間を優先して判断する必要があります。
例えば、保管期限があと3日残っていても、商品の品質を保証できるのが明日までであれば、配送を続けることは難しくなります。
「配送会社が保管できるか」だけではなく、「お客様へ良い状態で届けられるか」という視点で判断することが大切です。
配達できない商品は「返送」か「現地処分」
配送を続けることが難しいと判断した場合、主に次の2つの対応が考えられます。
1.商品を店舗へ返送してもらう
商品を返送してもらえば、店舗側で実物の状態を確認できます。
高額商品、特注品、賞味期限の長い冷凍品などでは、返送後に状態を確認し、問題がなければ再送できる可能性もあります。
一方で、返送には次のような問題があります。
- 返送費用が発生する場合がある
- 店舗へ戻るまでに時間がかかる
- 返送されても再販売できない
- 温度管理の履歴を保証できない
- 廃棄処理の手間が店舗側に発生する
商品が戻ってくること自体は安心材料になりますが、返送された時点ですでに品質が落ちており、結局廃棄することもあります。
その場合は、返送費用を負担したうえに、商品も再利用できないという二重の損失になります。
返送時の費用や取り扱いは、配送会社や契約内容によって異なります。
例えば日本郵便では、不在による保管期限経過で差出人へ返送する場合、返送料はかからないと案内されています。ただし、最初に支払った発送時の送料は返金されません。
2.配送会社に商品を処分してもらう
返送しても再販売や再利用ができない商品であれば、配送先の地域で処分してもらった方が、返送費用や店舗側の作業負担を抑えられる場合があります。
特に、次のような商品では現地処分が現実的です。
- 消費期限の短い生鮮品
- 温度変化によって品質を保証できない商品
- 返送されても再販売できない商品
- 商品原価よりも返送費用の方が高い商品
例えば、商品原価が2,000円の商品を返送するために、それ以上の送料がかかるのであれば、返送する意味は小さくなります。
ただし、配送会社へ処分を依頼する場合は、次の点を確認しておきましょう。
- 現地処分に対応しているか
- 処分費用が発生するか
- 処分したことを確認できる記録が残るか
- 写真や処分証明を取得できるか
経理処理や社内報告のためにも、いつ、どの商品を、どのような理由で処分したのかを記録しておくことが大切です。
配送会社へ電話で依頼して終わりにするのではなく、メールや管理表など、後から確認できる形で記録を残しておきましょう。
費用負担は「配達できなかった原因」で分けて考える
配送できなかった場合に悩むのが、商品代金や返送料、再送料を誰が負担するかです。
これは、配達できなかった原因によって考え方が変わります。
お客様側の事情
次のようなケースです。
- 長期不在
- 住所の入力間違い
- 受取拒否
- 配送会社からの連絡に応じなかった
- 保管期限内に再配達を依頼しなかった
このように、お客様側の事情によって商品を届けられなかった場合は、利用規約などに条件を明記したうえで、返送料や再送料をお客様に負担してもらう運用が考えられます。
ただし、お客様へ費用を請求する可能性がある場合は、購入前に分かりやすく表示しておく必要があります。
トラブルが起きてから突然、「返送料と再送料を請求します」と案内しても、お客様が納得してくれるとは限りません。
どのような場合に費用が発生するのか、あらかじめ商品ページ、配送案内、利用規約などで伝えておきましょう。
店舗側の事情
次のようなケースです。
- 店舗が住所を誤って登録した
- 発送日を間違えた
- 梱包や温度帯の指定を間違えた
- 発送が遅れ、期限内に届けられなくなった
店舗側のミスによって商品を届けられなかった場合は、原則として店舗側で費用を負担し、再送または返金を行うことになります。
原因を確認せずに配送会社やお客様の責任と決めつけると、さらに大きなクレームにつながります。
まずは、受注データ、送り状、出荷履歴、配送状況などを確認し、どこで問題が発生したのかを整理しましょう。
災害や交通障害などの不可抗力
地震、洪水、大雪、台風、通行止め、大規模な交通障害などは、お客様にも店舗にも責任がない「不可抗力」として考えるのが一般的です。
ただし、不可抗力だからといって、まだ届いていない商品の代金や再送料を、当然にお客様へ請求できるとは限りません。
民法では、双方に責任のない事情によって債務を履行できなくなった場合、相手方は代金などの反対給付を拒むことができると定められています。
実際の判断は、次のような個別の事情によって変わります。
- 一時的に配送が遅れているだけなのか
- 商品を届けることが事実上不可能になったのか
- 消費期限によって注文の目的を達成できなくなったのか
- 同じ商品を後日あらためて用意できるのか
そのため、災害時には一律に費用を請求するのではなく、お客様へ状況を説明し、次のような選択肢を案内する方法が適切です。
- 注文をキャンセルして返金する
- 配送再開後に同じ商品を届ける
- 新しい商品を再送する
- 別の商品へ変更する
- お客様の希望する時期まで発送を延期する
店舗側だけで結論を決めるのではなく、お客様の希望を確認しながら対応を進めましょう。
被災したお客様には負担を求めない対応も検討する
災害によってお客様自身が被害を受けている場合もしくは、贈り物で送ったギフト先が被災されている場合など、店舗側で注文をキャンセルし、商品代金を全額返金する対応も検討する必要があります。
発送後のキャンセルは認めないとお店上ルールとして決めており、あらかじめメール等でもご案内していたとしても、法律やルール上の責任だけではなく、お客様の状況や、店舗としてどのような姿勢を示すかも大切です。
災害で被災されただけでなく、商品を受け取れなかったうえに、返送料やキャンセル料まで請求されると、お客様は店舗に対して強い不信感を持つ可能性があります。
短期的には、商品代金や送料が店舗側の損失になるかもしれません。
しかし、被災したお客様へ負担を求めない対応は、長期的な信頼関係を守ることにもつながります。
災害時には通常のルールを機械的に当てはめるのではなく、お客様の被災状況や配送地域の状況を確認し、柔軟に判断することが大切です。
再送時に追加費用が発生する場合は事前に案内する
商品を新しく用意して再送する場合は、商品代金や送料がもう一度発生します。
追加費用をお客様に負担してもらう場合は、再送する前に次の内容を案内しましょう。
- 再送する商品
- 再送予定日
- 追加の商品代金
- 追加送料
- 支払方法
そして、お客様の同意を得てから手配します。
店舗の判断だけで商品を再送し、後から追加料金を請求すると、新たなトラブルにつながります。
「すぐに再送した方がお客様のためになる」と思っても、費用が発生する場合は、必ず事前に確認しましょう。
高額商品や特注品の場合は、一度商品を返送して店舗で保管し、配送可能になってから同じ商品を再送する方法もあります。
商品の種類や状態、返送費用などを確認しながら、最も損失の少ない方法を選びましょう。
特定商取引法の表示と利用規約を整備する
配送トラブルへの対応は、問題が発生してから考えるのではなく、平常時にルールを決めておくことが大切です。
なお、「特定商取引法に基づく表記」と「利用規約」は同じものではありません。
特定商取引法に基づく表記では、返品や契約解除の条件、送料などの費用負担について、購入者が分かりやすいように表示する必要があります。
消費者庁は、返品の可否だけではなく、次の内容についても明確に表示する必要があるとしています。
- 返品できる期間
- 返品できる条件
- 送料を誰が負担するか
「返品についてはその都度相談」といった曖昧な記載だけでは、十分とはいえません。
次の内容は、特定商取引法に基づく表記、利用規約、配送・返品ポリシーなどに分けて記載するとよいでしょう。
- お客様の長期不在や住所間違いによる返送
- 受取拒否が発生した場合の対応
- 返送料や再送料の負担
- 生鮮品や食品の返品条件
- 災害や悪天候による配送遅延
- 配送不能時のキャンセルと返金
- 商品を再送する場合の条件
- 配送会社による現地処分
- 返金方法と返金時期
ただし、利用規約に記載すれば、どのような条件でも有効になるわけではありません。
事業者の損害賠償責任をすべて免除する条項や、消費者の利益を一方的に害する条項は、消費者契約法によって無効になる可能性があります。
店舗に有利な内容を一方的に書くのではなく、お客様にも分かりやすく、双方にとって納得できるルールを整備しましょう。
配送不能時の記載例
利用規約や配送ポリシーには、例えば次のような内容を記載できます。
天災、悪天候、交通規制、配送会社の業務停止その他当店の責めに帰すことのできない事情により、商品のお届けが遅延または困難となる場合があります。
商品の品質保持期限、配送会社の保管期限及び配送状況を踏まえ、配送の継続、返送、現地処分または注文のキャンセルを判断いたします。
商品をお届けできない場合は、お客様へご連絡のうえ、返金、発送時期の変更または商品の再送についてご案内いたします。
再送に追加費用が発生する場合は、事前に金額をご案内し、お客様の同意を得たうえで手配いたします。
実際に使用する場合は、取り扱う商品、配送方法、決済方法、配送会社との契約内容に合わせて調整してください。
そのままコピーして掲載するのではなく、自社の運用と内容が合っているかを確認することが大切です。
ECサイトで告知するか判断する
災害や配送停止が発生したからといって、すべてのケースでトップページへ大きく告知する必要があるとは限りません。
トップページへの告知には、注意喚起だけでなく、「店舗が状況を把握し、責任を持って対応している」という姿勢を伝える効果があります。
その一方で、影響が一部地域や一部の注文に限られているにもかかわらず大きく告知すると、影響のないお客様まで「今は注文しない方がよいのでは」と考え、購入を控えてしまう可能性があります。
「災害が起きたら掲載する」のではなく、これから注文するお客様にも影響があるかを基準に、告知の要否と掲載場所を判断しましょう。
告知するかを判断する3つのポイント
告知が必要か迷った場合は、主に次の3点を確認します。
- これから注文するお客様にも影響があるか
- 影響する地域・商品・注文がどの程度あるか
- 配送停止や遅延が長期化する可能性があるか
影響が限定的で、対象となるお客様を特定できる場合は個別連絡が適しています。一方、これから受け付ける注文にも影響が及ぶ場合は、商品ページや配送案内、トップページなど、購入前に確認できる場所へ掲載する必要があります。
対象のお客様への個別連絡でよいケース
- すでに発送した一部の注文だけに影響している
- 対象となるお客様を特定できている
- 新しく受け付ける注文には影響がない
- 短期間で配達が再開する見込みがある
局所的な問題をトップページで大きく告知すると、影響のないお客様にも不要な不安を与えてしまいます。メールや電話などで、対象となるお客様へ状況と今後の対応を確実に連絡しましょう。
商品ページや配送案内へ記載するケース
- 特定地域への配送だけが停止している
- 一部の商品や温度帯だけに影響がある
- 特定の産地や出荷元の商品だけ発送できない
- 通常より配送に時間がかかる可能性がある
- 配送日の指定を受けられない地域がある
お客様が購入を判断する場所に、必要な情報を絞って表示することが大切です。対象地域、対象商品、影響内容が分かっている場合は、できるだけ具体的に記載しましょう。
記載例
一部地域では、災害の影響により配送の停止または遅延が発生しています。対象地域へのお届けには、通常より時間がかかる場合があります。詳しくは、配送会社の最新情報をご確認ください。
トップページで告知するケース
- 広い地域で配送停止や遅延が発生している
- 多くの商品や注文に影響する
- 店舗からの発送そのものを一時停止する
- 配送再開の時期が分からない
- お問い合わせの増加が予想される
- 注文前に知っておくべき重要な影響がある
トップページに掲載する場合は、次の内容を可能な範囲で記載します。
- 対象地域・対象商品
- 発送・配送の現在の状況
- 注文を受け付けているか
- 配送日時指定への影響
- 次回の情報更新予定
- 問い合わせ方法
告知場所の簡単な判断基準
| 影響の状況 | 主な対応 |
|---|---|
| 一部の発送済み注文だけに影響 | 対象のお客様へ個別連絡 |
| 特定地域への配送だけに影響 | 配送案内やカート付近へ記載 |
| 特定商品や出荷元だけに影響 | 対象の商品ページへ記載 |
| 多数の商品や注文に影響 | トップページで告知 |
| 発送業務そのものを停止 | トップページとカートで告知 |
| 影響範囲が今後拡大する可能性がある | 早めに告知し、随時更新 |
告知する目的は、災害が起きていること自体を知らせることではありません。お客様が「自分の注文に影響があるか」「今、注文してもよいか」を判断できるようにすることが目的です。
サイトに掲載した告知は次回更新日を決める
災害時の告知を掲載したままにすると、お店としてサイト更新ができていないと見られてしまうこと、災害の影響が落ち着いている・または配送が再開しているにもかかわらず、災害直後のような状況の告知が残っていることで、お客様が購入を控えてしまうこともございます。掲載時には、あらかじめ次のことを決めておきましょう。
- 誰が配送状況を確認するか
- 誰がサイトを更新するか
- 次回の確認日時
- 復旧後に告知を削除する条件
- 配送再開後も残す注意事項
告知を完全に削除するだけでなく、場合によっては「配送を再開しました」と一定期間案内する方法もあります。お客様に安心して購入していただくためには、告知を掲載することと同じくらい、状況に合わせて情報を更新することが重要です。
まとめ:重要なのは、速やかに状況を確認して連絡すること
災害や悪天候による配送トラブルでは、すべてのケースに共通する正解があるわけではありません。
商品の種類、消費期限、商品価格、返送費用、配送再開の見込み、お客様の被災状況などを確認し、個別に判断する必要があります。
その中でも、特に大切なのは次の3点です。
- 配送会社へ速やかに状況を確認する
- 商品の品質を維持できる期限を確認する
- お客様へ早めに状況と選択肢を案内する
問題が長期化するほど商品の価値が下がり、店舗とお客様の双方にとって選べる対応が少なくなります。
配送会社から詳しい回答が出ていない場合でも、まずはお客様へ「現在、配送状況を確認しています」「〇日までにあらためてご連絡します」と伝えるだけで、不安を減らすことができます。
平常時から対応基準と連絡手順を決め、特定商取引法に基づく表記や利用規約を整備しておくことが、配送トラブル時の損失と混乱を抑えることにつながります。
※本記事は、EC事業者における一般的な実務対応を整理したものであり、個別の法律判断を行うものではありません。規約の作成や高額な請求を伴う対応については、必要に応じて弁護士などの専門家へご相談ください。
